時代と地域に合った方法で、自分たちで”建築をつくる”│ パーリー建築

コミュニティ的な建築の先にある建築方法を探す│パーリー建築

現在 │旅するリノベーション集団「パーリー建築」の定住先は寂れた温泉街

鳥取県浜村町。鳥取駅から電車で30分程度。

パーリー建築とは
「改修する物件に住み込んで、施主や地域の人たちを巻き込み、一緒に物件をリノベーションする活動」
活動人物:宮原翔太郎 とその仲間たち
活動期間:2014年~
活動拠点:鳥取県(2018年現在)
Facebook:https://www.facebook.com/pticpartic/

仕事を請け負うために移動し続けた狩猟時代から農耕生活へ

温泉しかない町は東京より住みやすい

鳥取県浜村温泉。過去に温泉街として年間4万5千人ほどが訪れ栄えていたが、今ではすっかり減り年間4千人程度である。

全国各地で「改修する物件に住み込みながら、施主や地域の人たちを巻き込み一緒に物件リノベーションをする活動」を転々としてきたパーリー建築が浜村温泉に定住するというのだ。

( ↓ )パーリー建築についてはこちら

専門学校を卒業したての若者が確立した自給自足型の建築手法│ パーリー建築

2018.03.17

実際に彼らのもとに行ってみて、正直、ここでの魅力は温泉しかない。

しかし、そこで出会った人々は鳥取に戻りレストランを開いた男性やこれから浜村温泉に焼き菓子屋さんを開こうとしている女性、自分の町が好きでまったく地元を出るつもりはないという青年だったりと、浜村温泉やその地域を愛してやまない人々ばかりだった。

なぜ浜村温泉だったのか?宮原さんに聞いてみた。

パーリー建築 主要メンバー:宮原翔太郎さん
1990年生まれ。
大学卒業後、建築の専門学校で建築を学ぶ。
卒業後「パーリー建築」として、約3年日本各地をまわる。
現在は鳥取県で住宅や店舗のリノベーションを引き受け、改修・設計を続けている。

「一番は、温泉があるからかな(笑)
町民として住んでいると、公衆浴場の温泉に毎日無料で入れるんだよね。温泉に入り放題って、最高じゃない?」と屈託なく答えてくれた。

その日できる分だけの仕事して、温泉に入って、夜にはパーティーをして」ってという好きなように生活をするのに、鳥取は東京と違って家賃などの支出が大きくないから負担が少ないというのも理由の一つだった。

パーリー建築が住んでいる喫茶ミラクルに行くまでの道。人通りは少ない。

偶然開かれたリノベーションスクール

そんな温泉が毎日入れる町が鳥取にあることを知るきっかけになったのは、2年ほど前に浜村の建築屋さんに出会ったことだそうだ。

建築屋さんに勧められて、そろそろ定住をしようとしたタイミングで偶然に鳥取市で開催されたリノベーションスクールが開催され、偶然に喫茶ミラクルをつくる流れになったという。

そのスクールでは受講生たちが実際の空き家を対象に、活用するアイディアと具体的な事業計画まで考える

リノベーションスクール@浜村温泉」の発祥は、北九州市が2011年に始めた「不動産の再生を通じて、まちでの新しいビジネスを生み出しエリアを再生する実践の場」と謳い、2018年までで全12回行われた「リノベーションスクール」である。

( ↓ )北九州 リノベーションスクールについてはこちら

 北九州 リノベーションスクール

 

2011年8月から半年に1度のペースで北九州市で開催され、リノベーションを通じた都市再生手法を学び、実践する場。現在は、今まで実事業化した物件の視察ツアー等の関連イベントを加えて開催している

受講生はめちゃくちゃ面白い人たちで、すっごい真面目。そのスクールで、浜村温泉に家守的な場としての喫茶店をつくることを提案したんだけど、でも誰もできない。だから「じゃあ僕たちがやります」って。

もともと全国を回っているなかで、その土地に定住してこそできる建築や問題解決があると考えるようになってて定住を決めた先に偶然「喫茶ミラクル」の話を得て、家を得られたとのこと。

農耕地│遊休不動産だったスナックと床屋を改装した「喫茶ミラクル」

喫茶ミラクル (左)元スナック(右) 床屋 2階は1つの住居となっている。

使われていなかった建物の改修を通し、町を耕す

今、僕たちが住んでいる喫茶ミラクルは、リノベーションスクール@鳥取市の案件。1Fがスナックと理容室、2Fが住居の物件を改修して喫茶店にした。

喫茶ミラクルは2017年の夏に例の建築屋さんに教えてもらいながら、スクールの人たち、市役所の人たちと協力しながら作ったんだけど、パーティーが楽しすぎて工期がかなり遅れてた(笑)

喫茶ミラクルは滋味な建築

二つの建物だったため、床のレベル差がある。壁を壊して、空間をつなげた。

床の高さの違いを生かした、素でかっこよく、豊かな空間である。ここには視線のレベル差が会話を生むだとか、柱のリズムによる空間の緊張感だなんていう建築的な言葉ではない、よさがある。

この建物を生かしたかっこいい空間があるだけだ。

実際に自分の手でつくる「純粋にかっこいい」を追いかけて、経験を積み重ねてきた彼らだからこそ作れる素朴で人間味のある魅力を感じられ、幸せな気分になる。

 

 町を耕すと、収穫ができるようになった

実際、定着することによって仕事の仕方は大きく変わったところはあるのだろうか。

旅と定住の違いはほとんどなかった

彼らの「できる範囲で自分たちのできること」を増やす生活の仕方は、定住しても旅をしていたころも、なんら変わらない。という。

喫茶ミラクルの運営はパーリー建築の傍らで、できる範囲でしている。
喫茶ミラクルは週3日程度。しかし、それで十分にやっていけるのだ。田舎だからお客さんも限られるため毎日営業する必要もないし、必要以上に売り上げをたてることは必要でない。

そして町の人たちが集まる場を彼らが運営すると風のうわさでパーリー建築のことが伝わる。いい連鎖が生まれ、継続的に仕事がもらえている状況が生まれている。

作業に価格をつける

今、パーリー建築は自分たちの活動に対して報酬もらい仕事を請けている。浜村温泉ではすでに複数の仕事をもらえており、家賃を支払って喫茶ミラクルに住んでいる。

以前までは全く経験がない素人だったから報酬をもらわずに住み込みで改修をしており、仕事をするために全国を転々としていたが、経験を重ねるうちに作業に価値をつけることができるようになった。

彼らは経験を積み、収穫ができるようになっていた。

この間は、初めて発泡ウレタンを流し込む作業をしたんだけど、時間もかかるし、なかなか思い通りにかっこよくできなくって苦労した。でも、次はもっとうまくできるそんなことの繰り返し。

実建物で許される範囲のなかで、彼らは経験を積んで歩いているのだ。自分のできることに価格をつける」というのも彼らの仕事の仕方としての自給自足の一つなのだろう。

 

未来│改修の手段としてのコミュニティ的な方法のその先

現代版の茅葺屋根を生み出したい

時代に合った建築の仕方

パーリー建築として今後取り組みたいことを尋ねてみた。

「今まではパーリー建築として、地域の人や近隣住民を巻き込んで、コミュニティやソーシャル的な建築の方法でやってきた。
けれど今後は、時代や地域に合った建築や建築手法を、実際に作りながら研究していきたいと考えている」

そもそもリノベーションという方法を選択したのは「現代は建物がすでに多すぎるほどにあるのだから、自分で建てずに、今ある建築を利用すればいい」と考え、

現代に合った建築の仕方を考えた結果がリノベーションという方法だった、のだそうだ。

3年にわたるパーリー建築の活動を経て、次第に「その地域に合った建築」についても考えるようになったと言う宮原さんに「地域や時代に合った建築とは?」という問うと「現代版の茅葺屋根を生み出したい」と答えてくれた。

茅葺屋根は、時代と地域に合っている建築手法だった。
そもそも茅とは「屋根を葺く草」の総称で、茅という植物はない。茅葺屋根に使われる植物はススキやヨシなどの村のそばに群生している、つまり、すぐに手に入る植物が建材として作られていた

たしかに茅葺屋根を作り上げるには人手と技能が必要だが、当時は家一軒を建てることは村をあげての行事であり、かつ、仕事でもあった。当時は誰でもが萱を葺くことができる時代だったのだ。

しかし時代が進み、そぐわない方法となり、茅葺の屋根は都市から消えていった。

地域 に合った建築の仕方

茅葺屋根は例だけど、もしかしたら現代の家の屋根は、金属がいいのかもしれない。でも、地域によっては竹がいいのかもしれない。竹っていろんな地域で結構余っている材料だし、というようなことを考えたくて。

最近、建築の民俗学的な研究をしている人を見つけたんだ。
その先生は鳥取周辺にある離島建築を研究しており、離島ごとの地域性に合った建築とはどのような特色があるのか研究しているのだそう。

もし可能ならばいっしょにプロジェクトをやりたいと話してくれた。

その地域や現地で手に入れることができる材料で、時代にあった方法で建築をつくる

今まで宮原さんがパーリー建築として実践してきたやり方を、もっと具体的に建築に落とし込んだらどうなるのだろうか。

が考える地域性にあった建築に、興味を惹かれる。

地域性をくみ上げた、現代にあった建築を知りたい。宮原さんが今後耕す町 浜村温泉を中心に、今必要とされている自然体な建築のつくる手法とカタチができていくのではないだろうか。

狩猟的な生活から農耕をし定期的な収穫を得られるようになった彼がつくる「くったくないかっこいい空間」は「手法」として、今後は等価交換の取引として広がっていくにちがいない。

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専門学校を卒業したての若者が確立した自給自足型の建築手法│ パーリー建築

2018.03.17
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