重要なのは雇用形態ではない。「2025年の建築 新しいシゴト」で出会った16人の生き方│書籍紹介

すべての働く人に読んでほしい働き方を考える1冊

建築学科卒業後に、どう働くか悩んでいた時に先輩から偶然譲り受けた一冊。

「シゴトオルタナティブー新しいは働き方、別の生き方」というHEAD研究会が2013年に4回に渡り開催したシンポジウムを収録している。

建築がシゴトでなくても、この本に登場する彼ら・彼女らの対談からは「産業の現状とシゴトの仕方」を相対的に考えるきっかけになるはずだ。

HEAD研究会 とは?
「21世紀の新たな産業のあり方を探求する」という趣旨で、東京大学大学院教授”松村秀一”を中心に、建築・住宅・不動産に携わる多様な専門家、時代を担う若手および学生が結集した研究会。Home&Environment Advernced Designの略。
公式ホームページ

2025年の建築「新しいシゴト」



新しいシゴト≠起業

2025年の建築「新しいシゴト」には仕事を通じて、自分の人生を、主体に生きるための知恵が詰まっている。

この本では”一般的な設計職ではない”が建築・場づくりに携わっている16人のシゴトの仕方・価値観が、4回のシンポジウムごとに対談形式でまとめられている。

企業に就職して、あるいは今いる組織の中で、新しい仕事をつくる、新しい働きかたを模索することもまた新しい選択肢である。(略)

一方、社会に対して早く大きく仕掛けようと思うなら、個人でやるよりも有効な選択肢であるのだ。

やりたい仕事をつくり出す戦略、好きなことを仕事にする、あるいは仕事を好きになるための心構え。そういったものがそっと置かれている。

建築業界の現状

プロローグでは、人口減少をはじめとする社会環境の変化とそれに伴う産業の現状について述べる。

そして4部構成で、その問題や登壇者自身の問題にたいして、自らの道を歩んでいる彼ら・彼女らとこれからの建築の姿を考えていく。

ハードな都市を計画し、新しい建物をどんどん建てる時代から、まちのソフト(=コンテンツ)や、使われていない建物の使い方を考えなければならない時代を生きている。

大学で建築を学んだけれど

といって続くのは「建築を仕事にしていない」ではないだろうか。

【第1章│大学で建築を学んだけれど】では「建築学科で、一度は建築家を志したが異なる道を歩んだ4人」が登壇する。

このセッションだけでも、建築を学ぶうえで視野を広げて考えるための助走になるはずだ。

  • 建築の仕事のつくり方を知るために、建築を一度諦める:林厚見(R不動産ディレクター)
  • 二地域居住で、生きることの身体感覚を取り戻す:馬場未織(NPO法人南房総リパブリック理事長)
  • 仕事を切り口に場所をつくる:ナカムラケンタ(日本仕事百貨代表)
  • 建築の魅力を伝えるために、いろいろなシゴトをする:いしまるあきこ(きっかけ屋・一級建築士)

大学で建築を学んだけれど、建物を建てる仕事を選ばなかった人たちの話は、建築学生でありながら「学校教育/学生が憧憬する建築」と「現実社会に求められている建築」の乖離を見極められたからこその選択の話であった。

建築学を微分して”自分のシゴト”に積分しなおす

彼ら・彼女の共通点は建築学科卒業後、建築家や設計技師になる道をあえて選ばずに大学で学んだ建築学を自分なりに微分して、社会や自身が求めている場・空間として構築しなおしている。

その微積分の遠回りが、事業を組み立てることを学ぶために外資デベロッパーの経歴だったり、人が動物でありながら都市生活をすることに対するひずみに陥らないために都内と房総半島とを行き来する二拠点生活だったり、

自分にとって居心地のいい場所をもとめたてバーを経営したり、建築を学んでない人に建築や空間に興味も持ってもらうきっかけを生み出すための企画者としての生き方だったりするのだろう。

迷っているなら自分のイメージからもっとも遠くへ

エピローグには「コネクティング・ザ・ドッツ」という、ジョブスの有名な逸話が書かれていた。

ジョブスは偶然、学生時代にカリグラフに熱中していた。そして、それはのちにマッキントッシュの書体に大きく影響させた。という点と点が導かれてつながっていくという話である。

局面局面での小さな選択がいかに脈絡ないように見えても、それがいつかどこかで実を結ぶこと信じて。

私が歩く道を選ぶのは、教授でも上司でもない。結局は、私が私に責任を持つしかないのだ。

この本は、彼らのシゴトを知るためではない。今以上に、積分定数の範囲を広げることを考えるためだ。

業界に対する視野を広くし、あなたが生み出すシゴトの価値を大きくする知恵を得ることができる。

あなたの好きををつなげたくなるにちがいない。

目次│ 2025年の建築「新しいシゴト」

プロローグ 小さな仕事の複合体として広がる「建築のシゴト」の未来

session1:大学で建築を学んだけれど
人口減少によって建築が余る時、どう働くか
・建築の仕事のつくり方を知るために、建築を一度諦める(林厚見)
・二地域居住で、生きることの身体感覚を取り戻す(馬場未織)
・仕事を切り口に場所をつくる(ナカムラケンタ)
・建築の魅力を伝えるために、いろいろなシゴトをする(いしまるあきこ)
建築を学んだから見えた社会と仕事

session2:自分のシゴトは自分でつくる
独立しているのであれ、組織の中にいるのであれ、楽しくごきげんに働くとはどういうことなのか
・手元をかけず、ひとりでもできる「ナリワイ」の増やしながら無理しない生き方に(伊藤洋志)
・現場を見て、自分の頭で考える 高一で飛び込んだ商店街での体験がシゴトに(木下斉)
・今あるものに対する物足りなさに自分で「つくりたい!」という思いがかき立てられた(島崎賢志郎)
アプローチの仕方は、人それぞれ 目の前のことに臆せずぶつかることから


session3:未来の工務店の姿
日本の住宅の八割をつくっている工務店の未来の姿はどうなるのか?
・妄想から打ち上げまで。住まいてと一緒に楽しむ ライブのような家づくり(加藤渓一)
・丁寧な暮らしとともにつくる、住まい手参加型家づくり(河野直)
・「箱づくり」と「場づくり」を分けて、住まい手と工務店の幸せな関係をつくる(迎川利夫)
設計から施工までを新たなニーズに合わせて再編する(馬場正尊)


session4:家守という、古くて新しいシゴト
建築という分野の仕事としての可能性は今まさに人がる機を得ている
・賃貸住宅の大家のシゴトには大きな可能性があって、暮らしとまちを変える力がある(青木純)
・「高品質低空飛行」をモットーに金を稼ぐためだけに働くのはやめる(伊藤菜衣子)
・エンドユーザーを喜ばせることが、やがてビジネスになるのは、まちも同じ(伊藤卓巳)
・まちや社会がうまく機能していないから家守的なシゴトを自分で始めている(嶋田洋平)


エピローグ 建築業界の境界に広がる、主体的に生きるための働き方(島原万丈)

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