“公共空間”を考えるための入口として紹介したい3冊│書籍紹介

公共空間が「素敵な空間でない」のは、なぜなのか。



私が小学生のころは、日曜日の昼過ぎのテレビからは「あの施設の今は…!?」「山奥にある公共施設の実態とは……!?」というナレーションがよく流れていた。

子どもながらに公共施設って”昔偉い人たちが時代に作りすぎた大きな建築物”だと思っていた。

だからなのか、大人になった今でも”大きな公共の建物はよくない”と思っている節がある。

だから「建築」と聞くと大きなハコモノをつくるイメージが先行する。しかし建築や都市計画を学び、都市空間において公共空間は切り離せないものであることを知った。

建物そのものが悪いのではない。

「ソフト=管理体制」と「ハード=建築空間」がうまく連動して使いこなせていないのだ。そしてそれを学生の私にも平易な文章と写真と、わかりやすいダイアグラムで提示してくれたのが『RePUBLIC 公共空間のリノベーション』だった。

 

RePUBLIC 公共空間のリノベーション

公共空間を楽しくするためのアイディア集

RePUBLIC 公共空間のリノベーション(2013年刊行)

今ある公共空間の問題点を平易な言葉で説明をし、空気の通りをよくするためのアイディアや考え方を提示している。

ダイアグラムやスケッチが建築家の発信らしい。ダイアグラムの書き方だけでも、ちょっとした参考書になる。

学生が設計課題のテーマ設定の知識として、今後の働く先を俯瞰的に考えたいときに、ぱらぱらっと眺めるだけでも十分に得るものがある一冊だ。

一方、社会人にとっては公共施設を利用するための現実的な行政へのアプローチの仕方説明や、官民一体で行った事例は記載されていないので、その点を求めると不満足だろう。

実際に、これらの提案を実行するならば、膨大な関係各所の同意とすり合わせがあり、それはもういやんなるほどのコンセンサスが必要なはずだ。そういった社会的な泥臭さは書かれていない。

その辺りの”大人の事情”を柔らかくする秘訣のようなものもない。実際「そんな秘訣はない」のが現実なのだろう。

建築家としての役割を果たすための契機を与える書籍

僕らは政治家ではなから、「公共の概念を変えよう」と声高に言っても説得力がない。

建築家をはじめ、空間をつくることを仕事にしている人間ができることは結局、空間や建築で変化を起こし、理想の風景を描くことしかない。

もし公共の場に「自分の想い描く空間を生み出したい」と熱望するのであれば最も現実性の高いアイディア集として、

現在働いてはいるが、社会の泥臭さに飲まれてしまったときには、この本はあの頃の想いを思い出させてくれるはず。

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PUBLICDESIGN 新しい公共空間のつくりかた

“公共という概念”を変革し続けている6人へのインタビュー本

PUBLICDESIGN 新しい公共空間のつくりかた(2015年刊行)

公共空間、もしくは公共という概念そのものを変革する方法を探し、実践している6人へのインタビューが記載されている。

※上述の『RePUBLIC 公共空間のリノベーション』と似たようなデザイン、タイトルだがこの本は空間の提案本ではない。

この6人がつくり出したものはリアルな空間ばかりでなく、プロジェクトだったり、物事を動かすためのシステムである場合もある。

空間の主体者であり、運営者だ。彼らは、建築家や設計者ではない。

[目次] 新しいパブリックをデザインするために。
1章│ 行政に頼らず、まちを経営する
2章│ 子どももまちも豊かにする保育園
3章│  新しい関係性をつくるプロジェクトデザイン(丸の内朝大学,六本木農園)
4章│  気持ちを投資する21世紀の資本主義
5章│  自由に形を変えるクリエイティブファーム(co-labo)
6章│ 行政は最大のサービス産業である(武雄市図書館)

 

今でこそ公園や商店街、団地、学校を活用しようという動きがあるが、彼らが活動を始めた当時はそんな考えはまだ生まれる前の話である。

なにか一つ、既存の場所で新しいことを行うには、デザイン=かっこよさの力だけでは動かないことが大半なのだ。

そんな状況を変えていったのは、彼らの一つ一つの活動が続けられた結果である。彼らの活動が「公共空間をデザイン=設計する」という概念が広がりを生みだしたともいえるだろう。

<パブリックデザインを行うための6つのキーワード>
マネジメント/経営
オペレーション/運営
コンセンサス/合意形成
プランニング/企画設計
マネタイズ/収益化
プロモーション/情報発信 

彼らが行っているデザインは、経営的視点を含んだマネジメントなのだ。それを啓発するのがこの本の一つの目的であるのではないだろうか。

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CREATIVELOCAL エリアリノベーション海外編

欧米での公共空間に関するデザイン実例を紹介する書籍

衰退を受け入れ、その状況をポジティブに変換し、新たな価値観やライフスタイルを生み出している各国で実践されているまちづくりの小さな点を取材・分析し、紹介している。

産業が衰退し、限界集落が生まれ、空き家が増えた旧東ドイツやイギリスの都市。経済縮小と震災が重なったイタリアの村。財政破綻したデトロイト。

日本がこれから迎える衰退の先を生きている、今見るべき街の紹介

もちろん、諸外国と日本では、そもそもの法律や文化が違うのでこれらの事例を簡単に導入することはできないだろう。

しかし「衰退の先にこんな楽しみ方があっていいんだ」という知見を得ることができる。実践するまでの経緯やシステムの運用の仕方、行政との兼ね合いなどが紹介されている。

悲観的なこととして捉えるのではなく、受け入れ、日本でできることを探し求めている。

 

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建物(ハード)だけでなく、仕組み(ソフト)もアップデートする建築家

今回紹介した3冊は、OPEN Aの代表である馬場正尊がメインとなって取りまとめた本である。彼は、リノベーションを2000年代からはじめている第一人者だ。

『PUBLICDESIGN 新しい公共空間のつくりかた』から一文を抜粋する。

公共空間の管理はシステム化され、行政やそこから委託を受けた企業が行うものだと、僕らは思い込んでいやいなかっただろうか。実際、そこは「パブリック」なものなのだから、市民が管理しなければならないはずなのだ。

だからこそ彼は、建築家として硬直してしまった社会という関係を柔軟にすべく、提案を行い、空間に落とし込み、社会に秩序ある自由を手にしようとしている。

彼らの設計は、ハード=ハコモノだけではなく、中に入れるソフト=社会の仕組も現代社会に適応したものになるように、公共建築をアップデートしているのだ。

だからこそ、まずは世間の認知が高まるよう、実建築だけにとどまらず、変革者たちの理念を聞き出すインタビュー本や今日本国内外の街で起きている小さな変化の事例紹介の本を出したのではないだろうか。

▼▼馬場さんが著書の公共空間に関する書籍はこちら▼▼
2013年:RePUBLIC 公共空間のリノベーション
2015年:PUBLICDESIGN 新しい公共空間のつくりかた
2016年:エリアリノベーション:変化の構造とローカライズ
2017年:CREATIVELOCAL:エリアリノベーション海外編
2018年:この画像を表示公共R不動産のプロジェクトスタディ: 公民連携のしくみとデザイン

OpenA
住宅、オフィス、公共施設、公共空間のリノベーション。設計業務の他、編集も。メディア「東京R不動産」の運営。馬場正尊が代表を務める。

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